バンディング野鳥調査(鳥類標識調査)はカスミ網を張り、捕獲した鳥に標識足環を付け放鳥し、再捕獲した時に足環の情報を読取り、渡りルート解明、渡り時期の把握や地域の鳥類相の把握ができる。これは欧州で約100年前から始まり、日本では1924年に農商務省により始められ、1943年、戦争で中断し、1972年からは環境省(山階鳥類研究研に委託)が行っている。1961~2000年、約300万羽が標識放鳥され、約1万8千羽が回収された。毎年、全国で約20万羽に足環を付けているが、その回収率は1000羽で数羽程度で、東アジアでは調査の空白域が多く、欧米に比べ、調査効率が極めて低い。

 鳥類標識調査をする人をバンダーと呼び、約450名のボランティアが全国で調査している。バンダーになるには現バンダーの指導の下、数年間実施訓練を要し、その後、推薦を受け、山階鳥類研究所の講習会へ参加し、合否が判定される。バンディングをする時は地権者の認可を受け、カスミ網近くに環境省の赤い旗を立てる(左)

一部写真、現場状況知って頂くため「知って欲しい野鳥のこと」サイト管理人NさんのHPよりお借りしている。

 カスミ網はバンダーが監視していない時は、野鳥の羅網による不慮死防止のため、カスミ網は畳んでおかねばならない。カスミ網を張るための環境改変は本末転倒である。野鳥につける標識リングは山階鳥類研究所で管理され、バンダーは調査結果を同研究所へ提出が義務付けられている。その結果は「鳥類アトラス」として公開されているが、これは環境省のデータベースにもなっている。

 一般公開は2002年以降されておらず、結果が公開されない調査は何なのか。樹冠部を利用する鳥、大きい鳥、小さすぎる鳥、開けた場所を好む鳥、希少種が繁殖する場所にはこの調査は適さない。環境省の見解にも・調査とイベント、環境教育を混同してはいけない・バンダー以外が野鳥に触ってはいけない・かすみ網を張ったまま放置してはいけないとある。


 バンディング調査は嘗ては鳥の研究になくてはならぬ調査と言われていたが、今は様々な問題が指摘されている。

 1・網に掛かった小鳥のストレスは大きく、かなりの野鳥が落鳥(死亡)している。内容は「バンディング調査のこと」で検索できる。狭い領域での調査ではカラーマーキングの方が多くの観察者の目にとまり、再確認される確率はバンディグによる足環調査よりかなり高い。

2・これ程のリスクを犯してまで、再回収する野鳥が極めて少ない調査は下記の新技術と比べてみると、鳥の保護に役に立つよりも鳥への悪影響の方が大きい。

3・技術進歩に伴い、軽い発信器を野鳥につけ、地上の受信機や人工衛星で信号を受信する技術、安価なジオロケーター(日中の照度を記録し、カレンダーと比較し鳥の位置を割り出す)を野鳥につける技術が確立している。これらはバンディングに比較して、極めて少ない個体数の野鳥を扱い、生態系の野鳥への影響を最小にして、詳しいデータが短期間で効率よく得られる新しい方法である。

   「生き物(野鳥)への影響を可能な限り少なくする」の考え方の下、 笹窪谷でのバンディング野鳥調査は行わないよう要望する。

 また、笹窪谷の特性としてフクロウ、オオタカ、ノスリのような大型の鳥が谷戸を利用し 、特に前2種は同地で繁殖活動をしますので、これら特定鳥類への影響を考え、笹窪谷ではバンディングを行うべきではないと思います。羅網した小鳥を狙ってこれら猛禽類が網にかかる恐れもあります(野鳥の会茨城県支部の報告にオオタカ、フクロウ、コミミズク、ハシブトガラスの様な大型の鳥も羅網し、オオタカが網に掛かった小鳥を狙って二次的に羅網する事例有り)。バンディングする場合は地権者の了解をえる必要がありますので、地権者の藤沢市は同地保全の考え方に照らしても、同地でのバンディングを認めないよう希望する