マダニが媒介する病気 (野鳥の会神奈川支部 K氏寄稿)

  マダニが媒介する病気にはいろいろありますが、日本で気をつけなければならないのは、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、日本紅斑熱、つつがむし病、ライム病、マダニ媒介性の回帰熱でしょうか。いずれも重症になることがあり、特に前2者は治療が遅れれば死亡する場合がありますので、マダニに刺された時は医療機関に行き相談されるのが良いと思います。
病気の原因はマダニの持っているウイルス、リケッチャなどの病原体です。マダニに吸血された際、病原体は体内に入ってきます。この病原菌が体内で増えることによって病気の症状が出てきて、治療が遅れると重症化し、死の危険が出てきます。
  SFTSという病気は、最近テレビ、新聞などで報道されていますが、病気の原因となるSFTSウイルスは最近見つかったもので、世界各国でこの病気で死者が出、日本でも患者が発生しましたが、治療が適切であったようで、命に別状はなかったようです。日本の感染症研究所は優れた施設、人材に恵まれ、日本人で良かったと思いますが、初期治療が大切ですので、マダニに刺された時は少しでも早く医療機関に行き、感染症研究所の恩恵を受け、命を落とさないようにしたいですね。また、つつがむし病はツツガムシという、マダニに近縁のダニ
(マダニより小さいダニ)よって媒介される病気です。ツツガムシはマダニ同様、日本の野山、草むらにいて、人に付いてきます。日本列島改造論はなやかな頃、各地に高速道路が造られ、盛り上げた道路の斜面で野鼠が増え、鼠に寄生したツツガムシが異常増殖し、ツツガムシを介して病原菌が人体に入り、患者が出、当時大きな社会問題になったことを思い出します。マダニ、ツツガムシに刺された時は,何をおいても病院へ、と、山ガール、鳥見ガール(もちろんボーイにも)に、微生物学授業(教科書に出てくる)の時、かつて、学生さんたちに警告していたことを思い出します。知識を持った人が死亡したのでは恥になりますからね。

●HP管理者からの補足記事

・野鳥の会石川県支部報 米田豊氏

 マダニは屋外で生息する比較的大きい(吸血前3~4㎜)ダニで、頭、胸、腹が融合し丸い胴部になっている。幼・若虫は小動物に、成虫は大型哺乳動物に付くのが多い。♀のみが吸血し体積が100倍以上にもなる。発生消長は春~晩秋で人の野外活動時期と重なる。我国ではSFTC(重症熱性血小板減少症候群)等を発生し、有効なワクチンは無く、推定死亡率12%である。吸着後日時が経った場合は皮膚科で外科的に除去が必要である。

 

・野鳥の会広島県支部報 医師 倉岡敏彦氏

 ダニによる感染症、特に重症熱性血小板症候群(SFTS)が話題になっている。マダニ(家庭内のダニとは異なる)に咬まれて6日~2週間で発熱、吐気、腹痛等があり、血液の血小板や白血球が減少し、稀な疾患であるが、全国で16人が発症し9人が死亡している。他にダニに因るものに「つつが虫病」、「日本紅斑熱」がある。前者は毎年、400人前後発病、ダニの1種のつつが虫に因り、ダニの刺し口、発疹、発熱がある。刺し口は10㎜前後のカサブサになる。後者はマダニに因り、西日本で多く毎年150例程ある。野外活動後、帰宅後入浴してマダニが吸着していないことを確認するのを勧める。

 

・野鳥の会筑豊支部報 田中良介氏

 マダニから重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウィルスが人に感染し、死者が出ている。頭に小豆大に膨らんだマダニがついているミヤマホジロを見たが、渡り鳥を介して外国から日本にウィルスが入ったと思うのは間違いで、以前から日本に生息しているものである。