ヨシの刈り取り 

 広大なヨシ原ではその目的(例えば、刈り取ったヨシを人が利用、オオヨシキリ、チュウヒ、ヨシゴイ等の繁殖、ツバメの集団塒場所)のため、それに合った対応が求められる。笹窪谷のヨシは狭い範囲に限定的に繁茂し、これとは異なる対応が必要である。

 ここではヨシ原は湿性高茎草地として絶滅危惧種を含む多様な湿性動植物を主とする多様な生き物の生育場所である。ヨシ原は冬期に小鳥の塒になったり、ヨシに昆虫が卵を産み、越冬する幼虫、成虫を野鳥たちが食べ、その野鳥を狙う猛禽類が生息するとの生態系ピラミットの一端を担っている。カヤネズミも巣を作っている。また、ヨシは谷戸内に流れ込む汚染された水をきれいにする働きがある。茎につく微生物やその土中の微生物によって水の汚れを分解し、窒素、リン等の栄養分を吸い取る。

 ヨシは湿地を代表する植物で(水深があると衰える)、湿地に若いヨシが定着することから始まり、次第に広がり、年を経るとかなりの腐植質を堆積させる。長い目で谷戸の遷移を見ると、斜面や後背地から土砂が入り込み、枯れて堆積した植物で谷戸は乾燥化していく。そこに様々な樹木や外来植物の侵入を容易にし、それがまた谷戸の乾燥化に拍車をかける。湿性高茎草地が増えると湿性低茎草地の生育を妨げるので、この両者のバランス、谷戸内樹木、外来植物の除去を図る必要がある。

 

 何処にでもあった身近な環境が消滅しつつあり、絶滅が危惧される種や従来、谷戸では普通の種であった多様な生き物を守る観点から、自分たちが汗を流して作業する事で生き物が保全できる可能性がある限り、ヨシは場所を決めて残し、隔年で半分程度を交互に3月~4月頃に刈り取り、その一部は谷戸外へ運び出すことにする。このような環境は次世代に残すべき価値あるものとのアピールにも繋がると思う。(2015年4月25日)