保全管理作業の成果         岸一弘

 谷戸内湿地の保全管理作業を2013年から9年間継続して実施してきた。

その間、乾燥化の最大の原因であった、掘り下げられた河床が自然の力で元に戻りつつある。

長年の保全管理作業の効果もあって湿地の湿潤化が進み、マユミ(本来乾燥地に生育する木)などが生育できなくなって枯れたり、湿地性生物の増加・回復が確認されている。

管理作業エリアでは、外来の高茎植物が殆ど駆除される状態を維持できている。

 

 2022年度の主な成果

 

成果のあった種名

RBカテゴリ

 

     

ヒメシダの増加

 

横断道北側では、道から100mほど谷戸奥側でもヒメシダが増加した。

     

ヒメミズワラビの増加

準絶滅危惧

横断道北西側の創出池で2013年以降確認されるようになったが、2022年には横断道北西側と横断道北東側の創出池で生育が確認された。横断道北側での確認は、6年連続である。

     

オニスゲの増加

 

もともと横断道のすぐ北側や横断道南側で生育が確認されていたが、2020年以降横断道のより北側での生育が確認されている。

     

ハラビロトンボの発生

要注意種

湿地性の種で、2017年以降確認されているが、2022年も多数記録され、5年連続の発生となった。

     

ネアカヨシヤンマの発生

絶滅危惧IA

ネアカヨシヤンマは県の絶滅危惧IA類に位置付けられている種類で、藤沢市内では石川で成虫が記録されているだけであった。2022年に湿地部で羽化殻が見つかり、遠藤笹窪谷で発生したことが確認された。

     

マユタテアカネの記録

要注意種

湿地や池で発生する種類で、遠藤笹窪谷では2013年から2016年にかけて記録されていたが、2022年にも記録された。

 

 

これらの種は藤沢市ではいずれも希少な種だが、残念ながら藤沢市版のレッドリストがない。

今後、適正な保全管理を進めていくためにも、地域的な絶滅危惧度を正確に把握することのできるレッドリストの作成が不可欠である